32│2021年08月08日 聖霊降12 苦難の共同体

週 句 そこには、かつてわたしが平野で見た有様と同じような、イスラエルの神の栄光があった。 エゼキエル書8章4節
説 教 「洞穴の詩」牧師:高橋周也
      詩編57編1~12節

  本日の説教では、交読詩編と同じ箇所である詩編57編を取り上げます。1節において、「ダビデがサウルを逃れて洞窟にいたとき」という場面の設定があります。この詩の背後にある物語を見ておきましょう。この時、ダビデは、「私と死の間には、ほんの一歩の隔たりしかありません」(サムエル記上20章3節)と、死への恐れを口にせざるを得ない状況に置かれていました。やがてイスラエル王国の黄金時代を築くダビデは、先代(初代)の王である義父サウルに命を狙われていたのです。
 サウルはもともと優れた軍人であり、神に選ばれたしるしの油注ぎを受けて王となりました。しかし、イスラエルを脅かすペリシテ人との戦闘に身心をすりへらし、悪霊にさいなまれる状態に陥ります。サウルの前にダビデが登場したのはそのような時だったのです。最初は、強敵ゴリアトを倒し、かつ竪琴の名手であるダビデとの出会いをはじめは喜んだサウルでしたが、やがてほどなくして人々から人気を集めるダビデを見て、自分の立場が危うくなるのではないかと危惧するようになります。そして正気を失ったようにダビデに敵意を持ち殺害を図りました。
 ダビデはサウルの手を逃れ、逃亡生活を続けます。逃亡のさなか、2度にわたって、ダビデはサウル殺害のチャンスを得ます(サムエル記上24章、26章)。しかしダビデは、そのいずれの機会においても、油注がれた者であるサウルを尊重し、決して危害を加えることがありませんでした。かえってその態度がサウルを悔い改めに導くことになったのでした。
 「洞穴の詩」は特にサム上24章でダビデが王に追われて死の危機に瀕しながらも、なおサウルと対話を試みた場面のことをうたっています。今日私たちは、神への信頼をもとに現実に切り込んでいく信仰者の詩を読み、平和を覚えることにいたしましょう。